バトルシップガールとリバーズ・エンドの比較。
まず、主人公。
バトルシップガール(以下B.S.G.)の主人公は祐太郎ですが、
なんともまぁごく普通の少年です。バイトで戦艦に行く高校生です(笑)
非常にとまでは行きませんが、少なくとも最初は受動的な主人公です。
(ちなみに五巻中盤以降、能動的な人間への進化を遂げます)
そしてリバーズ・エンド(以下R.E.)の主人公、拓己。
これまたとてつもなく受動的……のように見えるんですけど、
ただ誰かに誘われて日々を過ごすわけではなくて、どちらかといえば 「誰かと共存していく」人間なのでしょう。
引っ張るか引っ張られるかで分ければ、きっと引っ張る側でしょうね。
十分な強さはあるし(だけど基本的にことなかれ主義)、人をひきつける力があるようです。
戦いを徹底的に拒否し続ける「情けなさ」は相変わらずですけど。
もちろんこの二人はキャラ的にはまったく違います。
一人称の違い、時代の違い、環境の違い(「組織に支配される」というところでは共通ですが)……
しかし、それを超越して共通点もいくつか見つかります。
それは、「自分から流す」のではなく「流される」という点です。
祐太郎が流されたものは「ナツミ」「環境」「軍のシステム」「戦いの必然性」「時間」で、
拓己が流されたものは「唯」「スクール」「周りの行動」「運命=遺伝子」です。
ナツミはどうかと思いますが(笑)、どれも「不可抗力」なのです。
だから、ある意味では「不幸な人たち」ということになります。
特に祐太郎の場合は、とことん流されています。
流され流され流されて、です。
しかし、その受動的に「戦い」を知っていた主人公も、五巻・六巻では
「ナツミを取り戻す」という能動的な行動に出ます。
よく、学級長に多数決で選ばれて、やる気がない学級長も任期が終わる頃には
いい人間になっている……という話を聞きます。
最初の気持ちはともかく、そのまま時間が過ぎていけばいずれ慣れてゆくものなのです。
初めは流されていたとしても、いずれは能動的に変わるものなのです。
拓己は戦闘においては最後まで受身的でしたが、唯への対し方は常に能動的だったことを、忘れてはいけません。
そしてヒロインです。
B.S.Gはナツミとアキという二人のキャラがその役をほぼ対等に担っていますが、
R.E.の場合、まず唯に、サブとして七海が当てはまります。
ナツミは非常に強い女の子です。確かに一度死んではいますが、
心は人間のままです。
しかも興味深いことに、生きている人間にはない何かがあります。
ナツミの場合、ただワガママに見えても誰も反対できないんです。
誰もが、その光景を微笑ましく見ることができるのです。
……それは、まるで無邪気な幼児の如くなのです。
しかし、実際ナツミの思うことはただの衝動というわけではまったくなくて、
思いやり、優しさ……暖かい、温もりがそこにはあります。
祐太郎への想いの力は、実際ものすごいものです。
ナツミが持つ「大きな愛」……「どちらかが死ななければいけないのなら、自分が死んでもいい。
それであの人が生きられるのなら……」という自己犠牲のselfless loveは、
本当に愛していなければできないことです。
で、ナツミに押され気味のようなアキもまた、
祐太郎への恋心を抱いています。
こっちのほうがもうすこし直接的かもしれないです。
祐太郎の真っ直ぐな優しさが、アキの心に染み渡ったといいますか。
ナツミとは恋のライバルなわけですが、同時にそれは親友という最高の関係でもあります。
どちらかといえばアキの方が繊細で、表現も間接的ではあります。
でももちろん中には強さがあって、それを生み出したのは祐太郎です。
私がショートストーリーを書く際にも、結構細かいところまで気を遣っています。
唯は……とことん、不思議な女の子ですね。
転校しても、その前も、ひとりぼっちで。
内の孤独と外の孤独を、両方一人で抱えていました。
それを救ったのが拓己であり、同時に拓己を救ったのは唯でもあります。
お互いがお互いの隙間を補完しあう関係といいますか。
運命的な出会いだからというのもあるのでしょうが、二人は惹かれあいます。
しかし、今考えればそれすらも計算の一つ、むしろ過程の一つだったのでしょう。
キャラクター的にはアキに近い存在だと思われます。
でも、「繊細さ」と「弱さ」、「儚さ」をさらに強めた感じです。
自立するには、あまりにも弱すぎる子です。
彼女の「たちの悪い」のは、本能のみで殺しつくす「残酷な無邪気さ」。
そして七海。
果てしないまでの心の傷と、尽きることのない左手の傷を抱えながら、
それでも元気に生きようとしています。
スクールの中にいるという破滅的な状況の中でも、明るく生きられる。
それほどまでの強さを表に表しています。
もちろんその背景には痛みが伴うわけで、何度も悲しい想いを体験しています。
何もかもを経験したからこそ、あれだけ笑っていられるのでしょう。
口調的にも、ナツミのような強さと少しの弱さがあふれ出ています。
この四人(二組)にも、また違いと共通点があります。
共通点が、一番大きいです。
祐太郎は言葉では疎ましいように言いながらも、心の奥底では
ナツミやアキのことが必要なのです。
ナツミを失った悲しみの激しさから見ても、それは確かです。
しかも、アキがそばにいても、ナツミへの想いから離れられないのです。
おそらくアキがいなくなったとしても、ナツミ一人では
祐太郎の心の穴は埋まらないでしょう。
一方拓己の場合、一巻最後でいきなり唯を失いました。
そして、そのまま二巻へ続きます。
絶望の中スクールへ入り、七海たちと出会うのです。
でもやはり悲しみはいえなくて。……そのときに、自分の幸せよりも
唯の幸せを想い、拓己は「目覚めないほうがいい」と思ったのです。
一人で生きていく覚悟、そしてそれに伴う心の穴。
それを承知の上、言ったんでしょう。
しかし、七海たちが拓己を、「唯に目覚めて欲しい」という方向へ動かしたのかもしれません。
「後ろ向きな発展」から「前向きな発展」への、方向転換です。
確かに唯がいなくなった穴はそう簡単には消えません。ですが、
七海たちとの生活はその代わりにはなったのでしょう。
もちろん、代わりでしかないのは確かですが。
もう一つの共通点、それは「愛」です。
今のところ外見には表れていませんが、唯も、
拓己のことが好きであるはずです。
それも、ただの好きではなくて、「愛に限りなく近い『好き』」です。
七海はまだまだ未知数ですが(友達に近い関係なのでしょう)。
ナツミの愛に関して、そしてアキの恋心に関しては
今さら何もいうことはありません。
いつもストーリーの中心を回っている三人(二人)の人物について
比較をしただけでもかなりの共通点が見つかるのですが、
他のキャラについても簡単に比較していきましょう。
・二人一組
B.S.G.では、モミジとカエデ(相棒関係)がメインとなるでしょう。
あと、高杉さんとヒカリさん(恋仲)、ムラマツとアズミ(師匠と弟子)という感じで。
そのほかにもアキとナツミ(恋のライバル)、ヒカリさんとアキ(先輩と後輩)、
ハーストさんと祐太郎(上と下の関係)、リディルとマチアス(兄妹)、
グリイドとターシャ(ライバル?)、カズマ→ナツミ(一方的)ですか。
R.E.については、七海と弥生(友達)、直人と茂(友達?ツルんでるだけ?)、
弥生と孝弘(友達と恋仲の中間)、伊地知さんと柚木さん(上と下の関係)というところでしょうか。
R.E.の場合、二者間だけで断絶はせず、さらにそのつながりの糸を絡ませています。
七海と拓己の関係、弥生と茂の関係(同時に、茂と孝弘)、七海と直人…。
しかし、こうやって比較していくとわかることがあります。
主要キャラでありながら、出てこない人がいるんです。
紅林さんと遙です。
紅林さんは所詮ギャグキャラに過ぎないので除外するとして(死)
問題は遙ですね。
ちなみに、無理に関係に入れましたがハーストさんもおそらく遙と同系統でしょう。
大きい関係が、ないんです。
これは、この世界の中で遙(ハーストさん)が異質であるということをそのまま示しています。
現にナツミを乗っ取ったときはハーストさんは関与していませんし、
遙は一人神秘的な状態であり続けます。
遙は出生自体「作られたもの」であり、明らかに他の人間とは違います。
ハーストさんは典型的なエリートキャリアであり、当然ながら
和気藹々とした戦艦ナツミの雰囲気からは外れます。
こうした「関係に関与しない人間」がいるからこそ、ストーリーは
さらに緻密さを増していくのでしょう。
もちろん、ストーリーの進展とともに遙が「仲間」になっていくことを特筆しておく必要があるでしょう。
B.S.G.では、一巻〜二巻はとにかく御気楽ストーリーです。
ある程度の伏線は出てきますが、結構気楽に楽しめます。
三巻で「軍」が本格的に出てきます。このあたりから
ナツミが秘める悲しみや、軍という存在の無情さ、
何もすることができないというジレンマなど、後々の絶望的ストーリーの序章へ進んでいきます。
四巻のお話で、その絶望は頂点に達します。
ナツミと祐太郎の不仲(恋愛の中のケンカではありますが)、
艦長という重責の重さに耐えられなくなってきた祐太郎、
絶望的な戦況などなど、どんどんページを読む速度を遅らせるような
暗い要素ばかりが突き出てきます。
そして、最後の最後で、本当にどん底に突き落とされるのです。
私も読み終えてから、言葉を失いました。
その中で始まる五巻では、のっけから悲しみの日々です。
日々の重苦しさと虚しさの中、アキと祐太郎の日々は始まるのです。
明るいことはいくつかあったにしろ、祐太郎は未だにナツミの「亡霊」に
とりつかれているようでした。
で、ほんの少しの希望が見つかって。
高杉さんとの不和や、ナツミがはたして大丈夫なのかという不安を抱えながらも
動き出すんです。
このときから、祐太郎は能動的に動き始めたんでしょうね。
ちなみに、MayはこのときのBGMをB'z「Strings of My Soul」にしています。
一度お聞きいただければこの気持ちもお分かりになるかと。
でも、やはり絶望で。ほんの少しの希望が見つかった後の絶望ほど、
痛いものはありません。
やはり今回も絶句しました(汗)
六巻も、そんな感じを抱えながらでした。
「何も知らないナツミという現実」と
「あのナツミを取り戻したいという理想」がぶつかり合うんです。
結局は強引ながらもまぁまぁハッピーエンドで終わるのですが。
そしてR.E.の道のりは……
一巻でものすごく嘘っぽい運命的な出会いを果たした唯と拓己が
淡い恋に落ちて。
不思議な事件がいくつかあって、絶望的な事件があって。
唯は昏睡状態。
家族も、みんな死にました。
二巻では突然キャストが総入れ替わりするんだけど、唯というかすかな接点を通してコミュニケーションがとられます。
何度か爆発を繰り返しながら徐々にまとまり始めていく姿が見えてきます。
三巻で見られるのは、肝試しを頂点とした「絆の完成形」。一方で、唯のこと、迫り来る現実、などなど、
数々の『遺しているもの』があります。
四巻からは戦闘と「絆の奥底」を覗くシーンの繰り返しで、完成したかのような「絆」が形を変えていますが、
五巻になると「別人」の唯という究極の異分子の挿入が絆をぶち壊し、一方でそれをも飲み込むかのように現実は着々と進行し、
絆もいくつかの穴を残しつつ強引に再構成されてゆく。
唯の異質さを反映したような強引なエンディングが、最後に待っているものでした。
これだけ見てきても、「リバーズ・エンド」と「バトルシップガール」の性質はまったく違います。
「バトルシップガール」では破滅の影が見えつつも外見的にはごく普通に進行して、それでいて突然破滅の死神が襲い掛かってくる。
「リバーズ・エンド」は一度奈落の底に突き落としておいて、断続的に切り傷がつけられ、そのたびに回復させられる。
B.S.G.はまだ読み進めるのに多少の喜びを伴うのですが、R.E.では谷の状態が連続しています。
どちらのほうがたちが悪いんでしょうか(笑)
……「半分の月がのぼる空」は、どこか「毎度毎度突き落としつつも、基本的には平穏な(むしろ明るい)日常が続く」という、
最悪の形ですよ。
余談ですが。
「リバーズ・エンド」の個人的テーマソングとして、B'zの「Raging River」をオススメします。
淋しげなメロと破滅的なサビの対比、そして美しいストロークのアコギのメロと
唸り叫ぶようなTak Matsumotoレスポールのサビの対比に、心を打たれます。
歌詞の無常さ、寂しさにも注目です。
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